真夏の夜に  〜お隣のお嬢さん〜



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交易の都市ヨコハマを政策で経済で牛耳るとされている団体や組織はいくつかあれど、
裏社会の雄、ポートマフィアといえば、
反社組織も数ある中でも、知らない者はなかろうほどの上位組織であり。
そんな組織の上級幹部ともなれば、
小競り合いレベルの抗争だ何だへ頻繁に呼び出されるということはない。
場数を山ほど潜り抜けたその恐ろしい実力は組織の内外へ広く知れ渡っているうえに、
この世界である程度は認知されている“異能力”というものも保持しているためで。
対手との実力も均さぬまま うっかり参戦しようものなら、
火薬の反応もないのにコンクリートの壁が粉砕しただの、
重機の形跡もないのにアスファルトが抉れただのと人外級の被害も甚大。
事態収拾は楽に済んでも、後片付けに手間がかかってしまうというもので。
よって日頃はと言うと、
提携している企業との資金や情報の連携だの通達だのへの都合で設けられた
ダミー商社やペーパーカンパニーの代表を務めていたり、
顔合わせのレセプションを催す折の主人役として振舞ったり。
公の場でもそんな格好で存在感を示しているのが、
五大幹部の一隅、中原中也といううら若き女傑である。
女優やモデルでも裸足で逃げ出すような、
極めて質のいい青い宝玉を据えたような双眸に表情豊かな口許という
華やかな美貌と均整の取れた肢体も素晴らしければ、
表情豊かな声音にのせて、ウィットにとんだ洒落た会話を繰り出す知性の持ち主で。
その背景を明かされていなくとも ひとかどの人物なのだろなと思わせる、
重厚そうな雰囲気というものか、威容をたたえた存在感があり。
洗練された所作や表情、知的な言葉選びに、マナーどころではない級の品格も伴われ。
商談の仕切りも上級で、社交界でもどれほどの知名度を保持しておられることか。

 しかも、その実力は
 経験豊かで懐ろ深いお人柄による人心掌握だけにとどまらず

交通手段が進化しようと、ネットが発達しようと、
国同士、組織同士の盟約や同盟やらは、大局的には大して変化がなかったりするもので。
だっていうのに古豪勢へと牙を立てて来る、身の程知らずで無頼な新興集団は、
それこそフナ虫のように次から次と涌いてくる。
人知を超えた能力を帯びた手の者がいることへ気を大きくした懲りない連中により、
人知でも物理でも“火薬庫”でもある港湾都市ヨコハマは、物騒な衝突や直接的な抗争がいまだにないではなく。
会合での親密さや、伝手やコネを絡ませ合うことで締結や維持ができる関係もあるが、
そのようなもの屁でもないとする、危険な“手腕”をどうしてだか手にしてしまった手合いが…たまに勘違いをする。
表立つこともいっそ喧伝になろうと、調子に乗って暴虐を繰り出したり騒ぎを起こしたり。
そういう厄介な手合いによる力づくの専横や台頭は許すわけにもいかぬと、
良くも悪くも頼りにされるのが
裏社会を仕切る組織として火力でも威勢でも最有力と名をはせるポートマフィアで。
即断即決という運びにて人海戦術を敷き、絶対的な力の差を示すという方法を執ることもあれば、
様々な搦め手を敷いておき、最終局面で一気に畳んで絶望の淵へ追い落とす場合もある。
とはいえ、表世界にまで波及するほど目立ちすぎるのもよろしくないと、
少数精鋭で構え、気配も音もなく、ついでに跡形もなく一気に潰すに越したことはないわけで。
銃器を持ち出しての対立という物理的な抗争にあって、
体術も戦術展開も組織随一なら、
非公式ながら裏社会では絶対の武装とも言われている“異能”を繰り出せば
一瞬でヨコハマが半壊しかねないほどの破壊力をも保持しているのが
こちらの女傑だったりし。
ちょっとした諍いには滅多に呼ばれぬが、
国家単位も同然の闘争やら協定への守り刀として招聘されることも珍しくはなく。
それだけその筋では名と顔を知られてもいる大御所といえ。
そんな身であればこそ、

 『頼んだよ。』

何をどうと言われずとも察しはつく。
首領自ら、あちこちへ精査の網を張ってらしたことは薄々察していたし、
そういえば、不自然な事象のウワサも聞かなくはない。
水面下に押さえ込んでのそれか、世間的には気づかれていない格好で何人もの失踪者が出ており、
一般人ばかりでもないらしいのに届け出がないところから
恐らくは異能がらみの何かしら、ヨコハマの闇の中でうごめいているのだろうと目串を差した。
人の賑わいが途切れぬ不夜城もあれば、物言わぬ重機がうずくまるばかりの地域もある。
ほんのちょっと海岸線から山手へ駈け上れば、緑豊かな丘のあちこちには名刹古刹もある。
そんな一角に不審な気配の出入りを突き止め、
失踪者らの足取りとも重なる其処へ、
様子見にと単独で足を運んだところ、不意を突かれて引きずり込まれた。
何の気配もない存在、だが、自分の居場所が欲しいのか、新たな侵入者には過敏な存在。

 “どこへも報告が出ていないのは、近づく端から捕らえられていたからか。”

腐臭はないが、それでも不自然に出っ張りがある岩壁のところどこ、
そこを祭壇にでも見立てているものか、
岩の塔のような標もどきが幾つも望める。
自分が捕まっているこれと同じかと、
こうまで搦めとられてやっと認識が至っているのもこの場合は無理もない。
輪郭が何とか確認できる幾つかが、
行方が途絶えたあとに、だがだが戻って来た者の姿と重なっているからで。
かすかに生気が感じられる者も居はするが、
くるまれた岩と同化したように、何の気も届かぬものの方が多い。

  ……では、戻って来た者というのは?

行き着いたおぞましい思惑へつながるような感触として、
無機物に間違いのない石くれだのに、体力だか生気だかを止めどなく吸い上げられている気配にぞっとし、
振り払う手や蹴りを足元から沸き立った岩で覆われた時点で、もしかして異能ではないのかも?と
柄にもなく超自然現象なのかもと戦慄した中也嬢であったほど。

  いやいや、
  そういえばいつぞや知己の虎の子が相対した異能者は岩石を自在に操る奴だった

無機物を扱える異能者が珍しいわけではないが、
飛ばしてくるくらいの単純さではない以上、制御にそれなりの訓練の必要だろうにと思えば、
ここまで大掛かりな仕立ての手を打たれるとは思わなんだ。
足元をすくわれたそのまま泥のように拡散しかかった岩の触手は、
こちらの両足へぐるぐる巻き付きつつ容積を増やし、
今いる岩場へこちらの半身を埋め込むように引きずり込まれており。
まるで意志のある生き物のような動きであることと、こちらの生気を吸い上げていることへ戦慄したものの、
いやいや例がないわけじゃあない、落ち着けと自身をいなしてのさて。

 “…それにしても。”

力づくの拘束など重力操作で破壊できたが、
土石流よろしく奔流のように崩す端から沸き上がり、
気が付けばぎゅうぎゅうと搦めとられているのが片腹痛い。
そのまま絞め殺したいわけではないのがかえって始末に負えずで、
きつい拘束で一気にかかられたなら、
その硬さへの拮抗を足場に破砕も効こうが、流動的な“泥”なのが何とも厭らしく。
弾いても押し除けても端から埋まり直すのできりがない。
油断したつもりはなかったものの、
こいつはちょっとぬかったなぁと、頭上を見上げて小さくため息。
高層部では風が出ているものか、月に薄雲が掛かっているのが勢いよく流れて見える。
煌々としていたものへの陰りが掛かって、あんまり縁起も良くないなぁと
らしくもない思いまで浮かぶ。

 「…しょうがねぇか。」

日頃の得手である重力操作でも何だか手ごわい泥化の異能。
今のところは何とか拮抗を保てているけれど、
体力が尽きれば形勢逆転して、くるみ込まれて食らい尽くされるのは明白で。
ここまで掴みどころのないもの相手でも効きそうな“最終異能”はだが、
中也自身をも滅ぼしかねない力なため、解放には手順を踏まねばならぬ。
直接触れるために手套を脱ぎ去り、
形式にのっとった、呪詛のような文言を唱えることと決めてある。
威力が大き過ぎて制御が利かず、
意識を飲まれた末のこと、中也本人へも危険が及ぶため、
突発的に発動しないようにという封じの儀式のようなもの。
この枷を外すと、自分ではもう発動を停められず、
どっかの唐変木さんの異能無効化でないと制止は出来ず、
暴発に飲まれて息絶えるまで暴れ続けることとなる。
だがまあ、このままでも身の危険は大差ないかもなと吐息をつき、
瞼を伏せると呪文にも等しい文言を紡ぎ始める。

 『汝、陰鬱なる汚濁の許容よ、更(あらた)めてわれを目覚ますことなかれ。』

諦めたように発動の文言の…取っ掛かり、
汝という部分を言ったかどうかというそんなところへ、

 「…その人にさわるなっ。」

声自体は少女のそれだが、気迫のこもった、まさしく裂帛の怒号が上から飛んできて、
気づかぬうちに自分の頭上から振り下ろされかけていた、土くれの鎌のような触手が粉々に弾け飛ぶ。
礫の雨の落ちる感触にハッとし、わずかほどしか動かせない顔を何とか見上げるように持ち上げれば、
夜陰の中から飛び出すように降ってきた存在があり。
激しい感情が生気をほとびらせての結果か、全身が淡く光って見える少女が間近へと飛び降りてきていた。

 “……え?”

極秘任務のはずだったし、それでなくとも警察側の立ち位置にある探偵社との合同作戦とは聞いてない。
なのに、自分のすぐ傍らへと飛び降りて来たのは、
武装探偵社の社員として見覚え有りまくりな一人の少女。
ブラウスシャツに黒地のキュロットスカートというシンプルないでたちながら、
白銀の髪に翡翠の双眸は なかなかに愛らしくも特徴的で。
この穴倉からは微かにしか望めなんだ月の子のような、
だがだが、幼いお顔を思い切り憎悪にしかめている様子は激怒の虎の子を思わせる、
つい先程思い浮かべていた愛しい子、白虎の異能を持つ敦嬢ではないか。
何の装備もないその身だけにて飛び込んで来たものか、
異能が強力なのと、銃器や刀剣は扱いが難しいことから武装しないのは常のこととて、
得体が知れない相手を前にしてのこの威容はなかなかのもの。

 「……あつ…。」

名を呼びかかった姉様を振り返り、一瞬にこりと笑ったそのまま、
振り上げた手は大きく鋭い爪装備の野獣のそれで。
ひゅんッと宙を薙いだその先から、バラバラと土の塊が降り落ちる。
懲りずに次の触手が伸びていたらしいのを粉砕し、
そのひと薙ぎを返す手で、
触れたかどうかという掠めよう、中也がくるみ込まれていた粘性の濃い泥塊をも引き裂けば、

 「…っ。」

他の異能を消すほどの威力もつ、虎の神気が作用したか、
あれほどに執拗だった浸食が掻き消えて、
生き物のようだった泥が乾き切り、
それへ包まれていた中也の身が支えを失って前方へと倒れ込む。

 「あっ。」

彼女をこそ助け出したかった少女が慌てて駆け寄り、
屈み込んだそのままひょいと背中と膝裏へ腕を通すと、双腕へ抱え上げた頼もしさよ。
どちらかといや痩躯な彼女だが、
異能が物理的な膂力だけということでもないにもかかわらず、
同じ年頃の女性を懐へと抱き上げて、無理のないバランスですっくと立っているところが物凄い。
むしろ、マフィアで体術筆頭と言われておいでの女傑な中也が、
立場がないとでも思うのか 疲弊が吹っ飛ぶほど顔を赤くしていて、

「いやあの、重いだろ?」

場合が場合であるとはいえ、
日頃からそりゃあもう猫かわいがりしている相手に抱えられているというのが何ともいえずで。
疲れ切っているのは事実だが、それでも落ち着けないともじもじしてしまう彼女なのへ、

 「無事で良かったです〜〜っ。」

抱えている腕をぎゅうッと縮め、抱きしめてくる虎のお嬢さんで。
何せ彼女の側にすれば、
連絡がつかなくなったのはあんまり公言出来ないお仕事でだろうと、何とはなく納得しかけていたものが、
そちらの組織の幹部にあたる黒獣の姫に呼び出された。
極秘任務中に消息を絶ったと聞き、
大外周りから一応ついていた護衛らが慌てふためいて知らせてきたその事実、
自分なりに追ったところが何とも得体のしれない事案らしいと嗅ぎ取れて。

 「……。」

しかもその上、

 「素直に甘えさせてもらったら?」

でっぱりというか岩場というか、
天然のテラスのようになっているそこへ、ひらりと舞い降りた人影がもう1つ。
まだまだ残暑厳しい中だというに、ずるずるとした長い外套をひらめかせて立ったのは、

 「太宰さん。」

探偵社の敦の教育係ながら、実は元マフィアの嬢だという謎の人。
中也嬢の華やかで鋭角的な美貌とは相反し、
こちらはどこかしっとりと妖冶で、水蜜桃を思わせる蠱惑的でミステリアスな美貌の持ち主。

 ……口を開かなきゃあだが。

知的な美人で、実際に鬼のように知識も持ってりゃ頭の冴えもすさまじいのに、
お調子に乗って人をからかうのも悪い癖で、
生真面目な同僚殿が嘘八百を吹き込まれちゃあ、万年筆を握りつぶすほどお怒りになるのも日常茶飯。
まま、それはともかく。

 “森さんに貸し一つだな。”

中也が単独で捜査にあたっていた この掴みどころのない存在による略取事案は、
正体を掴んでから動き出すなんて悠長なことを言ってられる代物じゃアなかったと判明。
失踪後に戻って来た人物の一人が、何と土砂降りの雨の中で“溶けて”しまい、
もしかしてこれって、人知を超えた代物か色々曰くのあろう取扱注意な異能かもしれないと
探査に関わっていた面々が真っ青になったのも如くはなく。
だったら…とっとと手を引いてしまえるよう、早急にパタパタと畳むに限るんじゃなかろうかと、

 “最適解がそういう代物になるってこともあるんだねぇ。”

四方八方から何かの結晶体のような尖った礫が襲うのへは、
黒獣の盾が的確に封をし、そうやって安全空間を構築した中、
敦と同様に降り立ったのが、彼女とは完全に別ルートで周辺を一通り探査して回っていた太宰嬢。
双方の事情に通じているのだろう、道標のように立っていた芥川に目配せを寄越し、
続けて地の底へと辿り着いたそのまま、

「待たせてごめん。」

うふふという笑みはさして取り繕いもないそれだったが、
続いて降りてきた芥川が背条を伸ばしたあたり、
かつてのマフィア幹部の匂いを含んだそれだったのかもしれぬ。
そのまま外套のポケットから封筒を1通取り出すと、
この荒れまくりな土地のはずれも奥向きにあったという、古びた祠にかざしてきたそれを
敦の鼻先へ端をつまんだ格好でぶら下げて見せる。

 「…何です?これ」

鼻先という位置関係と両腕が塞がっていたこともあって、
敦がクンすんと匂いを嗅ぐような所作をする。
一見すると何の変哲もない茶封筒だが、
先輩様も動いていたとは今知ったようなものだし、
彼女自身、この事態が一体どういう代物なのか、実は半分も判ってはいない。
だというに、

 「……っ。」

何かしら嫌な気配がするものか、
中也が顔を背け、敦の両手を覆う虎の毛並みもぶるるんと総毛だつ。

 「…まさか、これが?」
 「そうみたいだよ。乱歩さんのお墨付きだし。」

詳細まで調べもしないで、しかもしかも修験者でも術師でもない素人が、
つついたら面白い反応したって手合いをあれこれ試行錯誤して引きずり出して。
オカルトがらみの動画でも撮ってた奴がいたのだとか。
思うがままに操れているつもりだったらしいのが、
集まった顔ぶれを一気に“食らって”そのままどこぞかへ消えた謎の“そやつ”。
こんな場末へ…迷い込んだか、わざわざ身を隠したくて踏み込んできた連中か、
丁度いい餌だと認識した片っ端から食らってゆき、
ついでに偏りまくりの知識を拾い上げ、姿を乗っ取って人の多い街へ紛れ込み、
潜伏しようとしかかっていたらしい…とまでが把握されており。

 『要は 良からぬ存在だよ。』

交渉も何もなく勝手に人の姿を模して生活圏へ入り込み、そこから何をしようってんだか。
僕はそっちの世界の知識には疎いのだけれど、
人を脅かす侵略者とみなしていいと思う、というのが、探偵社の頭脳の見解だったそうで。
所長も、ついでにポートマフィアの首魁殿も異は無しとのこと。
雨に打たれた身がほどけるほど脆い癖に、
泥の触手で搦めとり、生気を吸い上げ知識を奪う。
そんな侵略者にこのヨコハマで好き勝手されてはたまらない…という点で、
皆の意思が同じだったということで。

 「君の爪なら引導を渡せるよ。」

響きのいいお声で太宰が告げる。
雲が晴れたか月の光が何とか届く岩窟の底が青白い光に満たされて、
先輩女史の端正なお顔が青く浮かび上がっている。
抱えた腕の中、身を縮めている中也の様子に…うんと頷いていた虎の嬢。
太宰がかざす封筒からは、この岩窟に漂う陰惨な気配と同じ匂い。
確かに怪しい気配だし、何より大事な姉様にとんでもない仕打ちをしていた存在、
許せないと表情が冴えて、そのまま異能抹消の爪をかざす。

 「……っ!」

太宰の手の間近ではあったれど、
触れるどころか近づいたと同時というほどにあっけなく、
そちらからほろほろと夜気の中へほどけていった歯ごたえのなさよ。
その最後のひとかけまでもが夜陰の中へとほどけたその途端、
周囲の岩棚から…ガリゴリとかぬちょりとか様々な気配と物音が立っていたが、

 「ああ、気にしなくていいよ。」

はたはたと綺麗な手のひらを振って見せた太宰さん。
それは晴れやかに笑って見せて、

「キミの手で解決できたことだしね、後始末は彼らが頑張ってくれるから。」

さあさ、その子を連れてどっかでゆっくり休んでおいでと、
飛びっきりのいい笑顔で追い立てられて。

  封殺対象は滅したという格好、事案はおさまったということなのだろう

何なら中也のセーフハウスにでも潜り込むといいよ、
食料や何やきっちり整ってることだろしと、
体よく追い立てた小さな背中を見送って。

「悪事や悪だくみじゃあなかったけれど、何かと起これば引っ張り出されるんだ、
 面倒な立場だよねぇ。」

やれやれと肩をすくめた太宰のやや後方に、居残っているのは黒獣の狗姫で。

「これも自給自足なのかな。」
「自業自得というものでは。」

珍しくも辛らつに言い返され、
おやと目を見張った太宰だったが、
周辺から駆け付けたらしい後始末部隊の気配を嗅ぎつつ、

 似たようなもんだ
 似てません。

最近なかなかに口が立つようになって来た愛し子へ、
言うようになったねぇとくつくつと笑いつつ、
今宵一番じゃあないかというそれは綺麗な笑顔をみせた女傑だったのでありました。





     〜 Fine 〜    25.09.05.

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 *夏なのでとちょッとオカルトっぽくとか思ったんですが、
  あまりの暑さに筆がなかなか進まないうちに二カ月もかかって暦はもう秋…。
  まあ、まだ十分酷暑だし、いっか。こらこら